みなさんの会社に退職金制度はありますか?
昨今は退職金制度を廃止する企業も増えてきており、廃止の傾向が年々強くなっています。
退職金の有無については、就業規則を確認すると退職金についてのことが書かれているはずです。
ここからは退職金について解説します。
退職金とは
従業員が会社を退職する際に支給される一時金のことです。これは長年の勤続に対する労いの意味や、退職後の生活の安定を目的として支払われるものです。
勤続年数や所属部署によって退職金の額は変わってきます。
企業規模 | 退職金制度がある企業 |
---|---|
1000人以上 | 90.1% |
300〜999人 | 88.8% |
100〜299人 | 84.7% |
30〜99人 | 70.1% |
全体 | 74.9% |
上表は勤続年数20年以上で45歳以上の退職者の平均退職金です。
高卒を見ると、定年退職時の現場作業者と技術系の部署では約300万円の違いがあり、部署によって退職金の額が変わることが分かります。
2018年には従業員30人以上の企業を対象に調査を行った結果、80.5%の企業が退職金制度を採用していたのに対して、2023年では74.9%の企業が退職金制度を採用しており、5年で5.6%の企業が退職金制度を廃止したことになり、退職金制度の廃止は今後も増えていくでしょう。
退職金の種類
退職金の受け取り方には、退職一時金と退職年金があります。
退職一時金
退職金を一括で全額受け取る制度です。
メリット
退職金は「退避所得」になるため、税制の優遇が適用され、支払う税金が少なくなります。
デメリット
受け取っていない退職金を運用しているため、退職年金の方が総額で多くなります。
退職金を一括で受け取ると、ローンの一括返済のようにまとまったお金を使うことができる反面、大金を得て気が大きくなるかも知れません。
退職金の管理と運用方法を考える必要があり、特に老後を意識する必要があります。
退避所得控除
退職金の控除額の計算方法です。
勤続年数 | 控除額の計算 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円) |
20年以上 | 800万円+70万円×(勤続年数−20年) |
課税対象=(退職金ー控除額)×1/2
となります。
勤続年数30年で、退職金が2,000万円の場合
「800万円+70万円×(30年ー20年)=1500万円」であり、1500万円が控除額になるため、「(2000万円ー1500万円)×1/2=250万円」で、250万円が課税対象です。
所得税・住民税
退職金の課税対象分には、所得税と住民税を支払う必要があります。
住民税は住んでいる地区によって変わりますが、だいたい10%と覚えておきましょう。
先の場合、課税対象が250万円のため、25万円の住民税を支払う必要があります。
課税所得 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
所得税は、「課税対象×所得税率ー控除額」です。
課税対象額が250万円のため、所得税は10%となり控除額は9万5,000円になります。
所得税を計算すると「250万円×10%ー9万7500円=15万2500円」となり、15万2,500円が所得税です。
退職金の手取りは、「2000万円ー15万2500万円(所得税)ー25万円(住民税)=1959万7500円」となり、最終手取りは1,959万7,500円です。
年収が2000万円の場合では、半分以上を税金で支払うため、退職金の税金控除額の大きさがわかります。
退職年金
退職金を分割で受けとる制度です。
メリット
受け取っていない分を運用しているため、合計で退職一時金より多くなります。
デメリット
退職年金は雑所得となり、退職一時金より支払う税金が多くなります。
年金とは別に受け取ることができ、老後の生活資金として使える反面、まとまったお金でもらえないのでローンの返済等には使用できません。
退職年金は公的年金と同じ雑所得扱いになり、他の所得と合算して計算します。
下記が雑所得の計算方法です。
年金を受け取る年齢 | 公的年金等の収入合計 | 雑所得の金額 |
---|---|---|
65歳未満 | 130万円未満 | 公的年金等の収入合計ー60万円 |
130万円以上410万円未満 | 公的年金等の収入合計×75%-27万5,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 公的年金等の収入合計×85%-68万5,000円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 公的年金等の収入合計×95%-145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 公的年金等の収入合計-195万5,000円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 公的年金等の収入合計ー110万円 |
330万円以上410万円未満 | 公的年金等の収入合計×75%-27万5,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 公的年金等の収入合計×85%-68万5,000円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 公的年金等の収入合計×95%-145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 公的年金等の収入合計-195万5,000円 |
65歳から年金を毎月15万円と退職年金を5万円もらった場合は、年間で240万円の所得になります。
「240万円(公的年金の合計)ー60万円(控除額)=180万円」になり、180万円が課税対象の金額です。
この180万円から毎月支払う社会保険料を引く必要があり、今回は24万円とします。
「180万円ー24万円=156万円」となり、156万から住民税と所得税を計算します。
住民税は「156万円×10%=15万6000円」で、所得税は「156万円×5%=7万8千円」となり、合計で23万4,000円です。
「240万円ー23万4000円=216万6000円」となり、216万6,000円が年間の手取り所得になります。
2,000万円の退職金を一括で受け取った際の税金は40万2500円に対して、公的年金込みで分割でもらうと、年間23万4,000円の税金を支払うことになり、退職年金は何年も受け取り続けるために、分割で受け取るほうが税金は高くなるでしょう。
退職年金には注意が必要で、退職金を社外で運用している企業が使えるシステムのため、社内で運用している場合は使えません。
退職年金の利用を考えている際は、各企業の総務課等で確認が必要です。
退職一時金+退職年金
退職時に退職金の全てを受け取るのではなく一部を受取り、残りを退職年金として受け取る方法です。
退職一時金でローンを完済して、残りは運用しながら退職年金で受け取るようなことができます。
多くの一時金が必要ではなく、年金で退職金を受け取りたい方に向きますが、退職年金を採用している企業でも両方に対応している企業は少ないです。
利用を考えている場合は、総務課等で聞くのが良いでしょう。
気をつけること
退職金を一括で受け取ると振込先の銀行から連絡があります。
「振り込まれた」という連絡だけではなく、「当行に預けてください」というのがあり、退職金の利用や運用が決まっている場合は「いりません!」ときっぱり断りましょう。
たちが悪いのは「老後のために退職金を運用して増やしませんか?」のように、投資を勧めてくる場合です。
預金なら元本保証ですので許せますが、投資については知識が必要であり、銀行の言いなりになると高い手数料を取られ、最悪は損をする場合があります。
銀行はあなたの利益を考えるのではなく、銀行の利益を考えているため、銀行が儲かる売りたい商品を売りつてくるのです。
相手は営業のプロのため、うまく言いくるめられて儲かる可能性が低い投資商品を購入させます。
退職金が振り込まれて銀行が何を言っても、まずは「断る!」ことです。
これが、あなたの大事な退職金を守る方法になります。
まとめ
退職金は一括と分割で受け取ることができ、一括は税金が優遇されるメリットがあります。
分割は運用しながら受け取れるため、一括より受け取る金額が多くなりますが、税金の優遇はありません。
どちらの受け取り方が良いということはなく、退職金を受け取るときの生活状況によって受け取り方を選ぶと良いでしょう。
